「よりよいお別れで、よりよい社会を」―。
この理念を掲げ、「おくりびとのお葬式」を率いるのは、代表取締役の木村光希。
納棺師の父のもとで育ち、映画『おくりびと』をきっかけに世界へと活動を広げた代表。話を聞いていて印象的だったのは、事業について熱を込めて語る一方で、お客様や、ともに働く仲間、そして自分の家族のことに話が及ぶと、その言葉がやわらかくなることでした。創業の原点から、理念に込めた想い、組織づくりの考え方、そしてこれからともに歩む仲間に求めるものまで、代表に本音で話を聞きました。
- ── 木村さんが葬儀業界に入ろうと決めたきっかけを教えてください。
- ── 映画や記事で語られている葬儀への想いは、ご本心なのでしょうか。率直に伺いたいです。
- ── 世界を視野に入れて事業を広げていく。その背景には、どのような考えがあるのでしょうか。
- ── 「よりよいお別れで、よりよい社会を」という理念は、どのように生まれたのでしょうか。
- ── 創業から10年目が経過しましたが、いまの率直なお気持ちはいかがですか。
- ── さまざまな葬儀会社があるなかで、「おくりびとのお葬式」の強みはどこにあるとお考えですか。
- ── 組織づくりについて、特に大切にされていることを教えてください。
- ── 同時に、社内のルールを徹底されているとも伺いました。
- ── 今回のお話からは、「人」へのこだわりが強く伝わってきます。
- ── 働く時間についても、独自の考えをお持ちだと伺いました。
- ── おくりびとで働くうえで、不可欠だと考える要素はありますか。
- ── 最後に、これから仲間に加わるかもしれない方へ、メッセージをお願いします。
── 木村さんが葬儀業界に入ろうと決めたきっかけを教えてください。
これは父の影響が大きいですね。父が納棺師でしたから、納棺師は私にとって身近な存在でした。
曽祖母が亡くなったとき、納棺をする父の所作を見て「かっこいいな」と感じたんです。あの背中を見ていたからこそ、その頃から自然と「自分もいつか同じことをするのだろうな」と考えるようになっていました。
── 映画や記事で語られている葬儀への想いは、ご本心なのでしょうか。率直に伺いたいです。
もちろん本心です。2008年に映画『おくりびと』が公開され、その影響で父のもとには海外から多くの声がかかりました。納棺について教えてほしい、と。私も父についてアジアの国々へレクチャーに行ったのですが、そこで改めて「日本の葬儀」の素晴らしさを実感しました。
技術や一つひとつの所作の美しさはもちろん、日本人に当たり前に備わっている心遣いや、ご家族にそっと寄り添う文化も、本当に水準が高いと感じたんです。この素晴らしさを、もっと多くの人に届けたい。日本やアジアの葬儀の水準をさらに押し上げ、自分がそれを牽引していきたい。そうした想いから「おくりびとのお葬式」と「おくりびとアカデミー」を立ち上げました。
── 世界を視野に入れて事業を広げていく。その背景には、どのような考えがあるのでしょうか。
難しいことを考えているわけではありません。おくりびとの素晴らしいお別れの時間を一人でも多くの方に届けられたら、その分だけ、社会は少しずつ良くなっていくのではないか。本心でそう思っています。
一方で、日本の葬儀業界には古い文化が残っている部分もあります。素晴らしい会社も数多くありますが、業界全体として高め合う文化が、まだ十分ではないように感じています。だからこそ、葬儀業界をもっとクリーンで、開かれた業界にしたい。これは昔から抱いている想いです。
そのために必要なのが「人を巻き込む力」、つまり影響力です。若い頃からこの業界をよくしたいと思ってはいましたが、若手が一人で声を上げても、なかなか耳を傾けてもらえませんでした。だからこそ実力をつけ、よいお別れの時間を一つひとつ積み重ねることで、自分の声が届く範囲を広げていきたいと考えています。
── 「よりよいお別れで、よりよい社会を」という理念は、どのように生まれたのでしょうか。
何か合言葉のようなものがあったほうが社内にも浸透しますし、自分たちの行動が間違っていないかを確かめる指針になるものがほしい、という思いが始まりでした。なかでも「よりよい」という言葉には、本当にこだわりました。
候補には「最高の」「感動の」「満足の」といった言葉もありました。間違ってはいないのですが、どこかしっくりこなかった。なぜかと考えたとき、率直に「おこがましい」と感じたんです。そもそもお別れは悲しいものであり、私たちにできるのは、その時間を少しでも良くすることだけ。そう捉えたときに、「よりよい」という言葉がすっと当てはまりました。
── 創業から10年目が経過しましたが、いまの率直なお気持ちはいかがですか。
まだまだ課題はありますし、完璧になるときはきっと来ないと思っています。大切なのは、「よりよいお別れで、よりよい社会を」という理念を、追い求め続けることだと考えています。どこまでいってもお客様の評価がすべてで、こちらが「いい葬儀だ」と言っても、それは自己満足でしかありませんから。
そう考えるようになった背景には、悔しい経験もあります。いい葬儀ができるという自信があるのに、選ばれないことがある。さらに、その葬儀があまり良いものではなかったと後から伺ったときには、本当に心が苦しくなりました。自分たちの伝え方やブランディングがしっかりできていれば、と痛感した出来事です。落ち込むこともありますが、立ち止まっている暇はないので、日々奮闘しています。
── さまざまな葬儀会社があるなかで、「おくりびとのお葬式」の強みはどこにあるとお考えですか。
やはり、「よりよいお別れ」を追い求め続けていることです。葬儀の質を高め、お客様から「よりよいお別れになった」とお褒めの言葉をいただく。その一つひとつの積み重ねが、私たちの強みになっています。
葬儀は究極のサービス業ですから、その形は日々変わっていきます。だからこそ、立ち止まらずに追い求めていく必要がある。昨日よりも、今日よりも、と全員で向き合っている。その姿そのものが、いちばんの強みだと思っています。
── 組織づくりについて、特に大切にされていることを教えてください。
葬儀業界は、他のどの業界よりも「他者評価」の世界だと考えています。たとえば納棺師が「頑張って作法を覚えました」と言っても、ご家族にとってはそこは関係なく、どれだけ価値のある時間を過ごせたかがすべてなんです。
ですから、オフィスの仕事も同じように、「頑張ったから」ではなく実績で評価します。評価はすべて数値化していて、年に4回、査定の機会を設けています。年齢や経歴は関係ありません。実際に、入社して間もない社員が本部長を務めていたり、役職を持たずに入社した社員が、いまは常務を担っていたりします。
やる気のある人が、年次に縛られずまっすぐ上を目指せる。これは、私自身が大切にしたい公平さでもあります。
── 同時に、社内のルールを徹底されているとも伺いました。
社内のキーワードは「成長」です。個人が成長すれば、会社も自然と成長していきます。逆に言えば、会社が成長するには一人ひとりの成長が欠かせません。だからこそ、自分の成長を、みんなで分かち合える喜びとして捉えてほしいと思っています。
ただ、その成長も、ルールが守られなければ会社の力にはつながりません。どんなに優れた技術や仕組みがあっても、それを守る土台がなければ意味がなくなってしまいます。
服装、髪型、挨拶といった部分は、当たり前のことだからこそ大切にしてほしいと伝えています。納棺の儀も、「おくりびとの納棺師」であれば、できて当たり前。ご家族にとっては、初めてのご納棺かどうかは関係ありませんから。大切な方との最後の時間をお預かりする以上、当たり前を当たり前にできることが、ご家族への何よりの誠意だと思うのです。
── 今回のお話からは、「人」へのこだわりが強く伝わってきます。
そうですね、人にはとてもこだわります。立ち振る舞いや言葉遣いは、普段からどんな視座で物事を考えているかで決まりますし、ふとした瞬間に表れるものではないでしょうか。その点、弊社のメンバーは本当に基準が高いと思っています。
なかでも、仲間の成長を純度100%で喜んでいる姿を見たときは、会社を創ってよかったと心から思える瞬間です。新入社員が納棺の練習を始めても、最初はなかなか上手くいきません。それでも毎日練習を重ね、ようやく独り立ちして、その社員がご遺族からお褒めの言葉をいただく。すると、上司もバックオフィスのメンバーも、誰もが自分のことのように喜び合うのです。ご遺族も、社員も、ともに幸せになっている。その光景は、何度見ても胸が熱くなります。
肩書きは、あくまで役割分担でしかありません。それぞれが自分の責務を全うしている姿は、本当に誇らしいものです。こうした仲間とともに働けることを、心から幸せに思いますし、この記憶はきっと、メンバー一人ひとりのなかに残っていくのだと思います。
── 働く時間についても、独自の考えをお持ちだと伺いました。
私は「時間=命」だと本気で思っています。弊社で働くということは、その方の命をお預かりしているのと同じだと考えているんです。だからこそ、社員には充実した日々を過ごしてほしい。せっかく過ごすのなら、豊かな時間にしてほしい。働いている時間も、プライベートの時間も、そのどちらもです。
プライベートの時間を奪うような社内の飲み会や部活のようなものはありません。むしろ、早く帰ってほしいくらいです。葬祭業に携わっていると、日々、命の大切さ――つまり時間の大切さを、感じずにはいられませんから。
仕事はもちろん全力で取り組み、結果も出してほしい。ただ、自分自身や、自分にとって大切な人との時間を大事にできない人が、他人の時間を本当に大事にできるとは思えないのです。ですから、家族を優先する社員も、しっかり結果を出していれば、何も問題ありません。むしろ、そうあってほしいと思っています。
── おくりびとで働くうえで、不可欠だと考える要素はありますか。
納棺師や葬祭プランナーとして働くなら、残されたご遺族に寄り添い、ご家族からの「ありがとう」を自分の糧にできる方であること。
バックオフィスで働くなら、そうした現場の仲間を支えることに喜びを感じられ、おくりびとのビジョンに共感して、ともに全力で進んでいける方であること。そうした方と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
── 最後に、これから仲間に加わるかもしれない方へ、メッセージをお願いします。
ぜひ一度、自分の人生を振り返って、自分が誰かの記憶にどう残りたいかを整理してみてほしいと思います。もし自分が亡くなったとき、どんなふうに語られ、どう覚えられたいか。それを考えてみると、自分が何をしたくて、どう生きていきたいかが、自然と見えてくるはずです。
私自身は、家族にも仲間にも「頑張っていたね」と言ってもらえたら、それで十分だと思っています。
おくりびとで働くと、他人の人生の節目に立ち会うなかで、自らの命や人生を見つめ直すきっかけがたくさんあります。若い仲間が、強い気持ちを持って働いている、成長の途上にある会社です。
この想いに共感し、ここで働きたいと思ってくださる方がいれば、ぜひ一緒に「おくりびとのお葬式」を育てていきたい。心からお待ちしています。